行政視察報告7

調査視察日:令和6年7月17日~19日

本市の政策の立案に参考とすべき先進事例を学ぶため、各分野で先進的取組をされている自治体を視察し、政策についての聞取りと意見交換を行いました。今回実施した行政視察の成果は、7月31日に各担当部署の部課長及び教育長に、8月2日に市長に報告、意見交換しています。

1.「未来の教育もりやビジョン」について
茨城県守谷市
守谷市教育委員会

会派意見まとめ

 「未来の教育もりやビジョン」は、守谷市が策定した教育に関する長期的な方針や戦略を示すビジョンであり、子どもたちが未来に向けて必要な能力や価値観を育むための取り組みを推進している。
 夏季休暇を少し減らし、2学期制をとるなどにより、中学3年生まで週3日以上の5時間授業を実現。また、理科・音楽・図工の教科専科を採用し、市費で教員を採用。これらの取組により、児童生徒、教職員共に日常の負担を平準化して放課後のゆとり時間を生み出し、児童生徒の学習効果の最大化と教職員の働き方改革につなげている。
 「こども、先生、保護者」のいずれからも肯定的評価を得ており、本市が取り組む場合に必要な視点・注意点について意見交換をした。

各会員所感

(森下 恒夫)
 子供のためであればどんな長時間勤務も良しとするという働き方は教師という職の崇高な使命感から生まれるものであるが、その中で教師が疲弊していくのであれば、それは子供のためにはならない。教師のこれまでの働き方を見直し、教師が我が国の学校教育の蓄積と向かい合って自らの授業を磨くとともに日々の生活の質、教職人生や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになることが学校における働き方改革の目的であり、そのことを常に原点としながら改革をすすめていく必要がある(中央教育審議会答申)。
 上の答申の言葉をふまえて授業時数の精査、3学期制を2学期制へ、夏季休業日数の削減等を検討しながらカリキュラム・マネジメントを行い、学習効果の最大化と教職員の働き方改革の両立を図ったプランとして、もりや型教育改革プランが出来上がった。テイーチングからコーチングへと言ったラーニングスタイルも研究され守谷型ラーニングスタイルとして確立した。又、部活動改革、不登校問題、いじめ問題等きめ細かな配慮なされている。みんな(子ども・保護者・先生)仲良く楽しく元気にを合言葉に学校生活が送られているようだ。

(嵯峨山 博)
 守谷市では、二学期制の導入や夏季休暇を8月末までではなく、1週間早く授業をスタートして、中学3年生まで週3日以上の5時間授業を実現した。その結果、会議時間を時間内に終わらせたり、中学校では部活時間を決め、16時50分には一斉下校させている。
 また、小学生の学童に利用ついては、下校時間が早まることにより利用時間が増えている。その分の負担は市が補助している。
 児童生徒の学習効果の最大化を目指し、理科・音楽・図工などの教員を市費で採用し各校へ配置している。
 部活動の地域移行も進んでいる状況でもある。
 夏季休暇を減らすことについては、養父市でも行っているが色々な意見が出ており、本市で行うにしても難しい問題であると感じたが、本市で取り入れられる事項については、積極的に提案していく。

(藤原 正伸)
 守谷型教育改革は、「こども、先生、保護者の幸せ」を目指し、学習効果の最大化と教職員の働き方改革を両立する独自の教育カリキュラムを導入しています。具体的には、夏休みの短縮、モジュール授業、2学期制の導入などを実施し、授業時間の確保と教職員の負担軽減を図っています。また、部活動の時間管理や専門教科専任教諭の配置、ICTの活用、いじめ防止プログラムの実施なども行い、教育環境の改善に努めています。これにより、児童生徒の学習効果向上と教職員の労働環境改善が実現されています。
 守谷型教育改革は、教育と働き方のバランスを取り、すべての関係者の幸福を追求する先進的な取り組みです。具体的な対策が講じられており、特にICTの活用や部活動の管理、専門教科の専任教諭の配置などは、児童生徒の学習環境を大きく向上させています。また、教職員の働き方改革が進み、彼らの労働環境が改善されている点も非常に評価できます。これらの取り組みが一体となって、地域全体の教育の質を高めていることが伝わってきました。

(松井 道信)
 守谷市では平成29年度から新教育課程実施検討委員会を立ち上げられ、教育現場での問題点克服を検討してきた。その結果主要な課題として、➀夏季休暇を減らす、➁二学期制の導入、③授業時間の午前中5時間制導入等が挙げられた。この委員会設立には当時の教育長の意向が大きく反映されており、現時点から見ると、かなり先見性を持った視点による取組であったと現担当者は話されていた。当時はまだ問題とされていなかった教員の働き方(教員の下校時間を早める、担任の空き時間を作る等)を改める事、細やかな子供への指導や配慮が出来るようにする仕組みを作ろうとするものであった。
 現在ではこの守谷型教育改革は市に根付いており、当たり前の体制となっている。当時は画期的な取り組みの事例であり、珍しいものと捉えられていたようである。
 こうした活動に対して、国は後を追うような形で先進地での好事例として紹介をしている。
こうした動きは教員サイドに基づく改善内容であるが、このことは教育の内容や質的なもの犠牲にせずに達成しようとするものである。一方で子供の側からも確実な改善点があり、下校時間が早くなることによって、帰ってから友達と遊ぶ時間、家庭での余暇時間の確保、が出来るようになり概ね好評との事であった。中学校では制度改革の一環で、クラブ活動も民間委託に早くから取り組まれただけでなく、クラブ活動をゆとりの時間として授業の一環と捉えたり、理科・図工・音楽については市採用の専科担当教員として採用し、担任への負担を減らす取り組みも行っている。
 ただ本市での採用がどうかと考えた際に、守谷市で行っている全ての仕組みを取り入れて展開することは、あまりにも多くの問題が発生することも容易に想像される。ただ部分的な一部導入を考えたときは、有効活用が出来そうなこともあり、今後の体制づくりによっては参考になる面もあると感じた。


2.「防災まちづくりの取組」について
東京都国分寺市
総務部防災安全課

会派意見まとめ

 市による防災データの積極的な公表が、市民の安全で住みよいまちづくりへの関心を喚起し、自発的な防災活動が始まったことから、防災知識の学習の場として「市民防災まちづくり学校」が設立され、幅広く防災の知識を学んで地区防災に関する普及啓発活動を行う人材を育成している。
 また、住民の安否確認のルール、避難行動要支援者の把握などは、各地区住民が主体的に地区の特性や危険、資源を把握することで、地区防災計画としてまとめられ、防災資機材調達の補助金等を通じて市が活動支援する仕組が確立していることが特徴的であった。
 自主防災の活動強化などについて意見交換を行った。

各会員所感

(森下 恒夫)
 国分寺市の防災への取り組みの歴史は古く、昭和50年に遡る。都市空間と危険性の調査研究が始まり、災害危険診断地図として市内全国配布されたのが市民の関心の高まりにつながったとのこと。
 市民に学習の場を提供することを目的に「市民防災まちづくり学校」が作られた。目的は市民自らが、安全で住み良い街づくり、地域社会づくりに関心を持ち、市民自らが、積極的に関与することで自分達の街のことは、自分達で決める、自分たちで守ると言った考え方が定着して行ったようだ。防災活動を通して地域協働が進んだ好例と言える。
 又、学校の修了者に防災推進員の認定が授与され終了者が中心となり地域で防災の普及・啓発を行うといった好循環を生み出している。さらに、市民防災推進委員会を設立し防災意識を高める活動が行われていて、防災まちづくり推進地区の指定と相まって計画的なまちづくりが進められている。
 我が市の自治協議会の活動はここに来て低迷していると思われるが、理念先行で何をする事によって地域協働を実現するかの掘り下げができていなかったと反省させられた。

(嵯峨山 博)
 国分寺市では、以前より市民自らが安全で住み良いまちづくりや、地域社会づくりに関心を持ち、自分たちのまちのことは自分たちで決め、守ることを目的に『市民防災のまちづくり学校』が設立された。この学校では、市職員や専門家が講師となり、防災に関するテーマを年に11回講義を行い、7割の講義を受講した方は学校の修了とともに、市民防災推進委員の認定を行っている。推進委員は各地域に点在し、多くは60歳以上で7割が男性でる。
 主に地震による災害が想定され、各地区の防災計画の作成や要避難援護者、安否の確認ルールを推進委員が中心となり各地区、各エリアで決めている。
 本市においても、自主防災活動がどのようにすれば活発になるかを考えさせられる視察となった。

(藤原 正伸)
 昭和49年に防災都市づくりを開始した国分寺市は、地域の防災意識向上を目指し、災害危険診断地図や災害危険区域図を公表しました。これにより市民の防災意識が高まり、それに応えるように市民防災まちづくり学校や市民防災推進委員会を設立して、防災知識の普及に努めています。市は防災まちづくり推進地区を指定し、地区防災計画の策定を支援し、各地区に防災備蓄倉庫を設置するなどの支援を行っています。これにより、市民の自主的な防災活動が活発化し、地域の安全性が向上しています。
  国分寺市の防災都市づくりの取り組みは、市民の防災意識を高めるための多角的なアプローチが素晴らしいです。特に、市民防災まちづくり学校や防災推進員の認定など、市民の自発的な参加を促す仕組みが効果的で、地域全体の防災力が向上していることが伺えます。市と市民が協力して防災まちづくりを推進する姿勢は、本市の模範となるべき取り組みだと感じました。

(松井 道信)
 国分寺市は現在においても人口が増加傾向にあり、現在では13万人を超えているが、市の面積に至っては11㎢余りで、森林率84%の本市と比較するにはあまりにも違いが大きい。しかし「防災」と言う面から捉えてみると、これは都市規模によって大きく異なるものでもなく、それぞれの考え方によって大きく変わるものであり、先進地としての国分寺市の事例は非常に学ぶべき点が多かった。
 防災の三助には「自助」「共助」「公助」があるが、「自助」に対する行政からの啓発もさることながら、住民による自主的な取組が素晴らしい。その歴史は古く、まだハザードマップと言う言葉さえ一般的でなかった昭和50年~51年に「都市空間の危険性」の調査・研究を実施し、昭和52年にはその成果として、「あなたのまちの防災診断」と題して、現在のハザードマップ同様のものを国分寺市独自に作成し、市報で公表までしている。本市などとは比較にならないほどの地価の高い地域において、こうした地価を左右するような活動を半世紀近く前に実施されていたことは画期的と言える。そうした地域の影響か否か定かでないが、自助の育成組織として「市民防災まちづくり学校」がつくられ、昭和56年には「防災まちづくり推進地区」も立ち上げられ、現在に至っており、その推進地区も現在では16地区まで増えている。こうした活動を支えているのは主に60才以上の第一線を退いた男性であり、市民防災まちづくり学校を終了した方々が市民防災推進委員となられており、現在の防災推進委員は667名が登録されている。更にその推進委員が中心となって地域防災の普及・啓発活動を行っている。この推進委員自体にも地域に偏りが出ないように、地域の自治会などから推薦をされて出て来ている方が多いのも特徴の一つと言える。推進委員も長年されていると高齢化となるが、現在ではその2代目が出てくるまでになっている場合もある。
 このように国分寺市における「自助」活動は、好循環で回っており、「共助」を執り行う市民防災推進委員ともうまく連携が取れており、活発な活動を継続的にされている。本市においては、防災組織の立ち上げ時点で躓いているとする例も散見され、地域防災と言う観点から見ると雲泥の差を感じる。その差がどこから生じているのかを精査する必要はあるが、日常の住民間のコミュニケ―ションについては、依然として都市化されていない本市の方が格段に有利なはずで、国分寺市のような取り組みは本市においても成立させることは可能であると考えます。全体を一度に真似るのは難しいですが、「市民防災まちづくり学校」の設立は案外可能ではないかと感じます。兵庫県には「ひょうご防災リーダー」という類似の制度もあるが若干ハードルが高いので、こうした身近に感じる事からスタートする防災は検討の価値大であると感じました。


3.「介護支援ボランティア制度」について
東京都稲城市
福祉部高齢福祉課

会派意見まとめ

 介護保険料が上昇する中、介護保険を使わなくて済む高齢者を少しでも増やす施策として、全国初の「介護支援ボランティア制度」を稲城市が発案して17年が経過。現在、全国で687自治体が、地域支援事業として取り入れている。
 介護周辺作業のボランティアを高齢者が担うことで、その社会参加と介護予防を推進し、ボランティア活動に対するポイント付与とその換金により、介護保険料の負担が実質的に軽減される仕組である。
 この制度はあくまで手段であり、目的は地域課題の解決。保険給付費の抑制に止まらず、地域のふれあいの希薄化、コミュニティの弱体化に対する解決策とするための制度設計上のポイント、介護保険の考え方について、多くの示唆を得た。

各会員所感

(森下 恒夫)
 介護保険の保険料が高いという市民の声を受けて考えられたのがボランテイア制度制度である。ボランテイア活動ごとにポイントが付与される。そしてポイントの交付金が最大5,000円受け取ることが出来実質的な介護保険料負担の軽減につながる仕組みである。
 制度設計は1)制度は手段、目的は地域課題の解決。しっかりと明確に 2)当事者(高齢者)の意見を尊重 3)関係者の意見を尊重 4)制度は分かりやすく 5)これまである仕組みを活用とシンプルで明解である。実績評価が詳しく評価されていて、保険料抑制効果まで算出されている。
 ポイント制度に当初厚生省は難色を示していたようだが、粘り強く交渉し実現したとの説明であった。現在では、厚生省の推奨も得られ、全国に広まり687の市町村で実施されているようだ。問題はいかにしてボランテイアを集めるかだが取り組む価値はありそうだ。

(嵯峨山 博)
 介護保険料が高く少しでも還元できないか?と職員が厚生労働省と協議を続け出来上がった制度が介護支援ボランティア制度である。稲城市が全国初であり、この制度設立から17年が経過している。現在では687市町村が、この制度を取り入れられている。
 介護支援ボランティア制度とは、介護保険料を支払っている方、そして要介護者であっても介護保健事業に関わることでボランティアをするとポイントが付与され、1000ポイントで1000円換金できる。年間最大5000ポイント換金できるシステムである。
 社会福祉協議会と協議し、どのようなボランティア活動ができるか様々な協議がされ、ディサービスの昼食の配膳、介護施設での囲碁や麻雀の相手、介護施設で演芸披露やイベント会場設営の手伝いなどがポイント付与される内容であり、現在は、ゴミ出しなどもポイント付与できないかと検討されていた。
 この事業の効果は、ボランティアを行うことにより、健康面や精神面に変化が訪れ、主観的健康感で大きな効果が現れています。
 本市でも、制度導入に向け提案していく必要がある。

(藤原 正伸)
 稲城市は、地域のふれあいの希薄化やコミュニティの弱体化に直面する中でも、ボランティア活動を希望する高齢者が多いことを踏まえ、介護保険料の高騰への対策として介護支援ボランティア制度を考案しました。この制度は高齢者の社会参加を促進し、介護予防と実質的保険料負担の軽減を目指すもので、活動内容はレクリエーションの指導や配膳補助、散歩の補助など多岐にわたります。平成19年に厚労省により介護保険の地域支援事業として認められ、ボランティア活動でポイントをためて換金するという制度が全国の自治体で実施可能になっています。
 稲城市の介護支援ボランティア制度は、地域課題を解決しながら高齢者の社会参加を促進する画期的な取り組みです。ボランティア活動を通じて、経験や能力を生かしながら地域社会に貢献できるだけでなく、介護予防にも役立つ点が魅力的です。ボランティア活動を通じて高齢者が元気でいられることは、個人の健康維持に寄与するだけでなく、地域全体の福祉向上にもつながります。地域住民の声を大切にし、柔軟に制度を設計、運用する姿勢が、成功の要因となっていると感じました。高齢者の健康と福祉を考慮したこの制度は、高齢化が進む本市においても採用を検討すべき優れたモデルだと感じました。

(松井 道信)
 東京都と神奈川県の県境、多摩地域に位置する稲城市であるが、この場所も近年継続して人口増の状態にあり、今なお人口は増加傾向にある。であるので若い人も多く高齢化率は22%と、本市とは比較対象とならないくらいである。しかし稲城市では、副市長の肝いりで平成17年度から国に対して、ボランティアで介護保険料を控除する制度提案を行ってきたが認可が下りず、平成19年度にポイント制なら、と稲城市の意を一部汲んだ形で認可されスタート。この制度は介護支援ボランティア活動によって、スタンプ手帳に押印してもらうことにより、年間最大5,000円を受け取れるという仕組みで、それが実質的な介護保険料の軽減となっている。活動対象は幅広く、レクレーションなどの指導や参加支援、お茶出し、配膳作業、散歩や外出の補助、話し相手等、様々な活動が対象とされており、中には週に2日間施設でお世話になっている方が、残りの2日間は同じ施設へボランティアに来られると言った方もおられ、最高齢齢は102才の方まで登録され地たりする。つまりは、この制度に登録し活動することにステータスを感じておられることを証左するものであると考える。またこの活動はシルバーと競合するものでもなく、シルバーの活動はシルバーとして独自性を保っている。また、この事業は非常にリーズナブルな運営となっており、現在市内にボランティア登録者746名、令和4年度に10回以上の活動を実施された方が179名もおられるにも関わらず、活動経費は手帳の発行を入れても100万円余りの事業費で賄われており、高齢者のやりがい意識の増進や意欲を高めるといった意味では非常に有効な活動であると感じた。又本市において採用を検討した際には、比較的スムーズに導入出来そうにも感じた視察であった。