先進地に学ぶ

管外調査視察報告

調査視察日:令和5年7月13日~14日

 本市の政策の立案に参考とすべき先進事例を学ぶため、各分野で先進的取組をされている自治体を視察し、政策についての聞き取りと意見交換を行いました。

1.公園と子育て支援施設の一体的整備
 「子育ての駅運営事業」
 (新潟県長岡市)

会派意見まとめ

 子育ての駅とは、長岡市内にある子育て支援施設の総称で、子どもと保護者が気軽に遊びや交流ができる施設である。

 施設には、遊具やおもちゃが用意されており、楽しく過ごせる「遊びの場」であるとともに、保育士や子育てコンシェルジュが配置されていて、子育てについての「相談の場」ともなっている。また、定期的にイベントやワークショップなども開催され、地域の中高校生から高齢者までの多世代が子育てに関わる「交流の場」でもある。
 
 子育て支援が地域社会全体として取り組むべき課題と位置付けられる現在、本市においても、子育ての駅のような、地域子育て支援の中心的な機能を果たす施設の有用性は大きい。

各会員所感

(森下 恒夫)
 平成23年に教育委員会に「子育て支援部」を設置し、教育と子育て支援の充実を図っています。又、平成28年には「子ども未来部」に改称しさらなる子育て支援に取組んでいます。厚生省所管の子育て政策と文部科学省所管の教育を一元化したもので、今、まさに政府が取組みを始めているこどもを真ん中に据えた子供家庭庁の先取りと言えます。

 注目すべきは、長岡オリジナル“保育士や子育てコンシェルジュのいる屋根付公園”と誇る「子育ての駅」で「てくてく」と「ぐんぐん」「ちびっこ広場(まちなか絵本館)」「すくすく」等があり、これらの施設は子育てと公園、防災、図書館等分野を横断して融合させた施設となっている。この他にも周辺部には、地域特性に合った子育ての駅が9カ所、児童館も39館と充実しており、それぞれの施設の利用率は大変高く、子育て施策の本気度がうかがえた。

 特筆すべきは市役所からして、街と一体化している点である。役所の廊下でなくて、街の通りでありオアシスでもある。設計が隈研吾と知って納得した。その名も市役所ではなく「アオーレ」である。駅前立地は本市と同じであるが込められた思いは大違いである。

(嵯峨山 博)
 長岡市では、子育て駅と称して長岡オリジナルの保育士や子育てコンシェルジュのいる屋根付き公園が整備されている。この事業は全国初となる保育士のいる屋根付き公園である。我が会派も、地域に出向き色々と意見を聞く中で、こうした施設が欲しいとの声が多くあったことから、この取り組みを視察した。

 この施設は雨や雪の日に子供が遊べる場所だけでなく、子育て中の親子や子育てサークル等多くの方々が集い、世代を越えた交流ができる場となっている。平成21年からこういった施設が必要だとの考えから四年間で4ヶ所開設されている。

 公園は国土交通省、子育て支援は厚生労働省と扱う担当が分かれており、従来の縦割りの考え方では進まない事業であるが、縦割りを統合するのが市町村であるとの考えかたで公園として子育て支援施設を作ろうと事業に取り組まれた。それぞれ扱う省庁が異なり職員の方々は苦労をされたと聞いた。こうした苦労の結果、財源はハード分野は都市公園事業費補助等があり、ソフト分野では子育て支援交付金等が適用されている。

 この施設を利用されている方々に感想を聞いたが、誰もが満足しており、子育てしやすい街であると自負されていたことが印象に残った。本市は、屋外運動施設が提案されたが、同時にこういった子育て支援施設も含めた複合型施設を検討すべきである。しかし、長岡市では平成21年には子育て支援施設に着目され取り組まれており、本市では令和5年にこうした問題に着目したことに、我々議員も大いに反省すべきと感じた。

(藤原 正伸)
 子育ての駅とは、市内にある子育て支援施設の総称で、子どもと親が楽しく過ごせる場所です。市内に13の施設があり、各施設では、遊具やおもちゃが用意されていたり、イベントや相談が行われています。

 長岡市子育ての駅条例によれば、子育ての駅は、子どもの成長と子育てを支援することを目的に、世代を越えた交流や子育て支援の輪が広がる拠点施設として設置されています。そのうち今回は、子育ての駅千秋「てくてく」と子育ての駅ながおか市民防災センター「ぐんぐん」の2つの施設を見学しました。

 前者は、公園の中に、雨や雪の日でも遊べる屋根付き広場と子育て支援施設を一体的に整備した、保育士のいる全天候型公園施設であり、後者は、中心市街地に隣接する長岡市民防災公園に、子育ての駅と市民防災の拠点機能が融合した施設で、いずれも公園と子育ての駅がひとつになった全国初の施設です。

 これらは都市公園事業(国交省)として整備されたもので,制度としては公園施設ですが,それを子育て支援機能として運用しているところに特徴があります。本来、都市公園の東屋や屋根付き広場として位置づけられる施設を,子育て支援という福祉サービスに使うという事業スキームを実現させた長岡市の企画力と推進力が評価に値します。

 本市における子育て支援事業についても、ソフト面での取り組みの充実と共に、施設の整備調達も必要と考えられ、厳しい財政状況の中で最大限の効果を上げることを考える上で、大いに参考とすべき事業であると感じました。

(松井 道信)
 長岡市は中越地方の中心都市で人口は約30万人。平成時代に3度合併を行い、面積は891㎡と巨大。
・てくてくは朝来市には無い公園に立地する子育て世代の交流サロンであり、看護師が駐在するなどしているが、利用料は無料となっており住民の評判は非常に良かった。固定客化している面もあり、決まった時間に連日訪れる子供たちも少なくない。
・ぐんぐんはJR長岡駅近郊に位置し元JR操車場跡地を利用して建設。この施設もこそだてのえきとして、てくてく同様、連日訪れるリピーターが多く若いお母さんの情報交換の場にもなっている。
屋根付き広場は防災の備蓄倉庫として利用されていた時期もあったとのこと。又発災時には避難場所としても利用されるため、非常食の備蓄やシャワー施設を備えるなど、有事対応の施設にもなっている。

 朝来市における子育て世代の交流場所については、早急に考えていかなければならない課題であるが、長岡市のぐんぐんのように防災と絡ませて検討する余地は大きいと考える。と言うのも朝来市に拠点的な防災施設は今のところ存在せず、いま止まっている全天候型体育施設の建設を取りやめると同時にこうした防災とジョイントした子育て世代施設の建設に路線変更してはどうか。



2.健幸都市の取組み
 「スマートウェルネスみつけ」
 (新潟県見附市)

会派意見まとめ

 「スマートウエルネスみつけ」とは、見附市が目指す都市像として総合計画に掲げる「住んでいるだけで健やかに、幸せになれるまちづくり」のこと。身体の健康だけではなく、生きがいを持って、安心して豊かな生活を送れる状態を「健幸(けんこう)=ウエルネス」と呼び、まちづくりの中核に据えていこうという考え方である。

 見附市では、「スマートウエルネスみつけ」の実現に向け、健康施策だけでなく都市政策においても、「自然と歩くまち」となるように、都市機能を中心部に集約するコンパクトシティの形成を図っている。

 「教育」「定住」「雇用」など、まちづくりの要素すべてに「健幸」の理念を広げ、超高齢・人口減少下においても持続可能な地域社会の実現を目指す見附市のまちづくりは、本市の手本として、大いに注目すべき事例である。

各会員所感

(森下 恒夫)
 見附市は人口が39,235人と本市と大きくは変わらない。本市と同様、農地、山林が80%を占める市である。予算規模は174億円、議員定数は17名と本市より人口は多いが、小さい数字となっている。しかしながら、さまざまな政策の結果①コンパクトシティ大賞最高賞、国土交通大臣表彰 ②プラチナ大賞及び総務大臣賞 ③SDGs未来都市選定等輝かしい実績をあげている。

 見附市は本市が健幸条例を制定する際お手本とした伊達市がお手本とされた元祖である。平成28年に健幸基本条例を制定されている。一人当たり医療費、介護給付費の実績を見ても効果は顕著である。これは、健康長寿、SWC(スマートウエルネス)の理念でまちづくりを推進された結果といえる。中心市街地を中核とした賑わいづくりとコミュニティバス(循環)とデマンド型タクシーを上手に使った公共交通のシステムは本市も参考にすべきである。又、コミュニティワゴンと称するワゴン車(10人乗り)をコミュニティ(11自治協)に各1台貸与していることは大変地域にとって効果的とのことであった。これこそ地域に寄り添う政策と言える。

 もうひとつ、市役所すぐ近くのまちの駅「ネーブルみつけ」は閉鎖された商業施設を900万円で買い取り、市場、カフェ、展示場、休憩場、子どもの遊び場、トレーニングルーム(健康管理含む)等があり市民交流センターとなっており、この一角には「まちづくり課」が置かれている。

 どこまでも市民に寄り添った市政運営が行われている見附市は本市もお手本にすべき市である。紹介した以外にもたくさんの見どころのある見附市であった。

(嵯峨山 博)
 いきいき健康づくりとして、食生活、運動、生きがい、健(検)診の4本柱にまちづくりが進められ、健(康)幸基本条例、歩こう条例を制定されている。本市においてもこのように先進的な取り組みを参考に健(康)幸づくり推進条例を制定し、ウォーキングコースを整備しているが、どのようにまちづくりがされているか再認識するため、本市の取り組みに誤まりがないか。再認識するために視察を行った。

 これまで取り組まれ、分析されてきた内容は以下の通り
 市民の6割は健康行動に無関心層であること。
 自家用車への依存度と糖尿病の患者数が連動。
 こうしたことから、歩いて暮らすまちを目指されている。

 取り組みとしては、本市の取り組みと大きな違いはないと考えるが、健康を柱としたまち作りと広く浅く事業展開している本市に大きな違いがある。例えば、歩いて健康になろうとしている事業があれば、公共交通はドアTOドアと歩かずに済む政策を行ったりと一貫性が見えない。こうしたことを整理する必要があるのではないかと考える。

 事業展開やまちづくりについて、改めて考えさせられた視察となった。

(藤原 正伸)
 新潟県見附市は、「第5次見附市総合計画(平成28年度~令和7年度)」の都市の将来像として「スマート ウエルネス みつけ」の実現を掲げている。
 身体面の健康だけではなく、人々が生きがいを感じ、安心して豊かな生活を送れる状態を「健幸(けんこう)=ウエルネス」と呼び、これをまちづくりの中核に据えて、「住んでいるだけで健幸になれるまちづくり」を目指す取組みである。

 健幸への関心は人それぞれ、というのが現実ではあるが、健康意識の高い人も、そうでない人も、誰もが健康でいられることは理想的である。
 実際に、見附市では、健康運動教室や健診などの健康施策だけでなく、施設整備や公共交通などの都市政策においても、人々に外出と運動の機会を提供することを中心命題をしており、このまちづくりの方針に従って、普段の生活で自然と必要な運動が満たされる、「歩いて暮らせるスマートシティ」の形成が図られている。
 このような健康増進を都市システムに落とし込む試みこそが、「住んでいるだけで健幸になれるまちづくり」であり、見附市はこれによって、医療費の抑制、介護認定率の低さを実現させている。

 総合計画、総合戦略に基づいて、全庁的に取り組んだ成果であり、この事業スキームは、本市にも大いに取り入れていくべきと感じた。  

(松井 道信)
 新潟県の中央に位置し人口は4万人弱。平成の合併時において、近隣の市町村が合併の選択をしたにもかかわらず、見附市は合併しない道を選択した。
・スマートウエルネスみつけのまちづくりは施策に共通する大黒柱がある。それをもとに所課を横断した一つの方向性に向かって実行に移されている点はおおいに評価されるべきであり、見習うべきことと強く感じた。
・病気は歩くことで予防改善できるという共通スローガンの下、1台5,000円の歩数計を市が購入斡旋し医療費の削減に結び付けている。ネーブルみつけも同様、1月1,500円と言う安価な利用料の設定で、利用しやすい仕組みを作り、健康増進を図っている。また、今回訪問は出来なかったが、健幸の湯ほっとぴあやイングリッシュガーデンも同様のコンセプトで市が直営で運営している。
・健幸条例制定後、スマートウエルネス施策を進め、市内を歩きたくなるようなハード面の整備やモデルコースの設定や演出といったソフト面からの動機づけを図るだけでなく、そこに公共交通政策や地域コミュニティ組織の設立に結び付けるなど、コンパクトシティ構想の一環に位置づけ実行されている。都市政策と地域包括ケアシステムをそれぞれを行うのではなく、共同で推進されていることに感動した。

 今回の視察で一番参考になったのは、見附市における市の施策に対する考え方であった。
一つ一つの計画が所課の枠を超え、市全体で一つの方向性に向かって進もうとしている姿勢に感動した。訪問させて頂いた施設は朝来市には無い性格のものであったが、朝来市の考え方を一歩前進させるには絶好の視察先であったように思う。今の朝来市に欠けているものが見えた気がした。