調理と配送の実際を視察 食育の更なる推進を考える

朝来市学校給食センター視察報告

視察日:令和4年6月29日

事前準備として検便検査を受け、結果を給食センターに提出。
当日は健康状態に関する点検を受けた後、センターに入った。

⒈調理場の視察

 給食センター仕様の服装(調理衣・帽子・マスク・履物)に着替え、調理場視察における注意事項の説明を受ける。給食に影響が生じると大変なので、非常に緊張する。
 時計や指輪などは外すよう指示される。異物混入の防止・衛生管理のためである。
 調理衣や帽子は毎日洗濯し、常に清潔なものを着用するとのこと。履物は作業区域ごとに区分して用意され、移動の都度履き替えるようになっている。

前室
 爪ブラシを使って爪の間も洗浄するなど、入念に手洗いをする。爪ブラシは個々の職員ごとに専用となっていた。石けんでの洗浄後、アルコール消毒も行う。

検収室
 納入された食材が検品される部屋である。納入は既に済んでおり、数量や品質等の確認を行った後、専用の容器に移されていた。
 また、野菜に付いた土を洗い落とす作業や皮むきなどもここで行われている。皮むき機が設置されているが、無駄を出さないために、手作業の比重も大きい。

野菜下処理室
 検収した野菜類を洗浄する専用の部屋である。
 食品は当日処理が原則のため、量が多く、大変である。複数あるラインを食品の種類毎に使い分け、1ライン3槽のシンクで流水により順番に洗い上げられる。
 1種類の洗浄が終わるたびに、シンク自体も洗浄される。徹底した衛生管理である。

※その他、米庫、洗米室、肉・魚下処理室、食品庫などを見学。
 ここまでが汚染作業区域と呼ばれる区域である。

再度前室
 以降の、調理や配食などを行う非汚染作業区域と呼ばれる区域に移動するため、履物を履き替える。エアーシャワーで全身清浄を行い、再度手洗いを行う。

煮炊調理室
 大きな回転釜で煮炊き調理や汁物調理をする部屋である。具材を切るのもこの部屋でされる。釜に入った具材を大きなヘラでかき混ぜる作業は、かなりの重労働である。
 一画で和え物が作られていたが、こちらも体力の必要な作業である。

炊飯室
 米を炊く連続炊飯機が置かれている。重い炊飯釜が沢山使われている。全自動ではなく、要所で熱い釜を調理員が移動させる必要がある。これもまた体力の要る作業である。

アレルギー調理室
 食物アレルギーの対応食を作る専用の部屋である。現在、食物アレルギーのある児童・生徒、約60名分の給食を調理している。(7月現在、70品目に対応)

コンテナプール
 消毒保管装置で熱風消毒された配送用コンテナが置かれている。出来上がった給食が入れられた食缶が、このコンテナにセットされ、各学校に配送される。

※その他、和え物室、揚げ物等調理室などを見学。

2.配送・配膳・試食

 生野小学校で、給食の到着から、各クラスの児童が食缶や食器を教室前に運ぶまでを視察。
 到着後は、検温(冷温共)を行った後、各クラス毎に配食される。各教室では、給食当番の児童が配膳に当たるのだが、低学年のクラスほど時間を要すると思われ、食べるときには多少冷めているかもしれない。それでも子どもたちはおいしそうに食べている。配送中に給食が冷めるのではないかという心配をよく聞くが、大人は温度に拘りすぎているのではないか。
 我々もここで、同じ給食を試食。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、おいしくいただいた。

3.調査事項概要

⑴施設

  • 学校給食センターは平成27年9月供用開始
  • 調理場はオール電化、フルドライシステム
  • 能力=1日最大約3,000食の調理が可能
  • 令和4年度予定調理数=1日約2,400食
  • 年間給食日数=小学校184日、中学校180日

⑵職員数

  • 正職員9名
    (主任調理員2名、技能労務職員2名、事務職員5名)
  • 会計年度任用職員
    常勤21名(運搬・調理員1名、調理員19名、栄養士1名)
    非常勤8名(調理員8名)

⑶業務

  • 朝来市学校給食センター調理作業マニュアル及び機器使用マニュアルに基づいて、厳格な衛生管理の下で調理が行われている。
  • 配送と回収はシルバー人材センターに業務委託(一部直営)
  • 牛乳とパンは各業者が直接学校に配送
  • 食物アレルギーへの対応は、学校給食における食物アレルギー対応マニュアルに基づいて対応。令和4年度の対応児童・生徒数は60名(2.6%)。

⑷食材料の調達

  • 学期毎(青果は2週間毎)に、登録業者の見積りを比較し決定(但し、価格のほか、産地等も考慮し総合的に判断)。
  • 地元農家からも随時購入。
  • 原則として、使用する当日に納品され、その日の内に使い切る。

⑸地産地消

  • 地元産食材の利用実態
     地元農家等約20軒と連携し、地元産野菜等を購入。使用する野菜等全体に占める割合は約19%。
     使用する米の92%は朝来市産コシヒカリ。また月1回コウノトリ米を使用(6.9%相当)。
     使用する味噌の約90%を市内の味噌加工業者から購入。
  • 課題
    『形や大きさの揃った、害虫被害や傷、腐れのない野菜類を調達すること。』
     不揃いや虫食いなどがあると、下処理に時間を要し、給食配送に遅れが生じるおそれがある。規格や状態に関して農家の協力が欠かせない。

⑹平均残菜量(一人一日あたり)
 全体12.3グラム(小学校6.4グラム、中学校25.4グラム)

4.まとめ

地産地消
 発注段階から個々の農家との交渉になり、必要量の確保や、気象警報・新型コロナなどの影響による食数の変動など、調整事務にかなりの手間がかかっている。
 調理現場では、発注先が多いことから少量多数の納入があり、それぞれに対応しなければならないことから、荷受けの負担が大きい。また、規格が不揃いなので作業がしづらく、時間に追われる中で、多くは扱えない現状がある。
 これまでも、地元食材利用の仕組み作りを農林振興課と協議し、JA等にも相談した経緯があるとのことである。
 地産地消の推進には、規格統一、集荷納入などを一括して行う仕組みを構築することが必要である。給食の価値を生産者に理解してもらい、協力を得ることが不可欠である。複数の農家をマネジメントする必要があるので、日頃農家と関係のあるJAの関与を求めることも有効だと考える。

 献立に関する手紙を全ての学校に毎日届けているそうだ。地産地消を推進する目的が、地域の食文化や農業等への理解、生産者への感謝の心を育むことにあることからすれば、この取組もまた、重要な地産地消の取組だと言える。

職場環境
 施設に関しては、各工程のレイアウトが概ねうまく出来ている。ただ、炊飯のレーンは、予算や場所の制約からか、釜数に比して短く、調理員に力仕事を強いている。回転釜での調理と合わせて、調理員の健康管理(腰痛など)に注意が必要だ。

 調理場の温度管理のための空調操作を事務所でするようになっている。調理場は、釜からの蒸気などにより、温度が変化する。食中毒防止のために、設定温度を一定に保つ必要があり、事務所で十分注意する必要がある。

所感
 異物混入やアレルギー、食品の温度などが問題として取り上げられるが、限られた時間の中で、安全で質の高い給食が作られている。職員は今後も、自信を持って業務に当たってもらいたい。

 最大3,000食提供可能な大きな施設であり、調理に当たる人員も含めて、本市の重要な資産である。食育や子育て支援の観点から、更なる活用を考えていかなければならない。