調査視察日:令和5年11月14日~15日
本市の政策の立案に参考とすべき先進事例を学ぶため、各分野で先進的取組をされている自治体を視察し、政策についての聞取りと意見交換を行いました。
1.「高等学校への給食提供について」
兵庫県宍粟市
宍粟市教育委員会事務局
会派意見まとめ
宍粟市では、食堂がなく弁当を持参できない生徒が多い県立千種高校に給食を提供している。本市内の高校も同様の問題を抱えていると推測されることから、宍粟市の取組みを視察した。
宍粟市の給食センターは、地元産の食材を積極的に使用し、生産者と児童生徒の交流を促進するなど、食育に力を入れている。そのような中で、小規模高校にも給食を提供するという珍しい取り組みを行っている。
県立千種高校への給食提供は、保護者や学校関係者などの要望に基づいて始まった。給食提供は、中高の連携型一貫教育校としての教育の一環として行われている。千種高校は地域や中学校と連携して存続に努めており、県議会との協議の末に給食の実現にこぎつけもので、給食が地域の高校教育の維持や若者定着にも貢献する先進事例といえる。
市内にある2校の公立高校が少子化の影響で存続が危ぶまれる本市にとって、参考になる先進事例ではあるが、給食提供が、高校の特色化やブランド力、生徒の地域への愛着や自信、地産地消の推進に寄与していると考えられる一方で、高校給食の実施に伴う高校側の課題や負担もあり、本市で高校給食を検討する場合も、これらの課題を解決することが必要になる。
また、今のところ保護者や学校関係者の具体的要望がない本市において、高校給食の検討を進めるにあたっては、高校や生徒の実状やニーズを詳しく調査する必要がある。
自治体による高校への給食提供について、引き続き全国の事例を調査・研究することとする。
各会員所感
(森下 恒夫)
朝来市と異なり、宍粟市では山崎学校給食センター、一宮波賀学校給食センター、ちくさ学校給食センターの3カ所で3,092食が提供されている。学校給食費は年間1億3,805万円で、市の負担は1,500万円と合わせて1億5,305万円で運営されている。
宍粟市の給食センターの特徴は地産地消を基本とし、生産農家と児童がお互いに顔の見える関係を築いている点である。生徒は、生産者の苦労を理解し感謝して食べると言った正に食育が実践されている。一方生産者は、児童に農作業の話しをするといった交流の機会が設けられており、これらのことから生産者の耕作意欲の向上につながっているとのことである。
食材の調達にあたっては、仲介業者が生産者を取りまとめており、センターと生産者が情報共有しながら、作付に工夫する等の調整がなされているとのことである。又、地元JA、や地元スーパーと生産者との連携により納品調整が図られている。さらに、農業振興課もこれら調整に関わっているとのことであった。
又、平成29年に始まった、千種高校への給食提供は、全国的にも大変珍しい取り組である。千種高校は生徒数が112名と小規模であるが、それだけに高校存続にかける地元の思いも強いものがあったようである。そのような思いが給食の提供に繋がったようである。地元からの要望、市長、教育長との懇談、県高校教育課との協議、市職労、兵教組宍粟支部との協議等を経て3年後に実現に漕ぎ着けている。
これらのことからも分かるように、宍粟市の食育に関する取り組みは並々ならぬものがある。地元産食材で給食を提供したい思いは、我が市でも同じであるが、そのシステムを構築するには多くの時間と労力と知恵が必要になる。どれだけ強い思いで取り組むかにかかっていると感じた。
又、高校の給食については、我が市においても小規模高が有り、宍粟市の千種高校の取組は参考になると思う。我が市の給食センターの調理能力には十分余裕があり、センターの効率アップと高校の特色と言う面でも検討に値すると思う。さらには、地元愛が増し、ひいては若者定着にも期待が持てるのではないだろうか。
(嵯峨山 博)
宍粟市には3校の高等学校が存在する。その中の千種高校においては、市が運営する学校給食センターから昼食の提供を行っている。
以前から千種高校存続に向け地域の方との連携、中学校との連携を行いながら学校運営を行なっていた。そのような時に県議会との意見交換があり、学校給食提供についての要望がなされ、関係団体等との協議に3年を要したが実現した。他2校については、学校給食提供は行なっていないとのことである。当然のことながら、県、学校、市が連携しなければ実現に至らないことではあるが、市が積極的に取り組んだことではないと感じた。
本市には2校の公立学校があるが、少子化の影響により今後の存続が2校ともに厳しくなっていくことが予想される。本市として存続を要望していることから、市が積極的に働きかけを行う必要があると思うが、手段について我々も調査、研究を引き続き行う必要があると考える。
(藤原 正伸)
市の学校給食センターから市内の県立高校に給食を提供することについて、全国的にも珍しい取り組みを行っている宍粟市を視察し、以下のような感想を持った。
① まず、高校給食の実施は、生徒の健康や食育にとって非常に有益である。宍粟市における、県立千種高校への市学校給食センターからの給食提供の検討は、平成27年当時、同高校の昼食事情が、食堂がなく、パンや飲料の自販機があるのみで、家庭から弁当を持参できない生徒は、登校途中のコンビニなどで弁当を購入するか、自販機のパンで済ませていたことから、これを学校教育上の地域課題と捉えたことから始まった。
高校生は成長期であり、栄養バランスのとれた食事が必要だが、本市内の高校も食堂がなく、似たような状況にあると思われる。給食を通して、生徒に食の大切さや楽しさを教えることができると考える。
② 次に、高校給食の実施は、地域との連携にも貢献する可能性がある。市の学校給食センターは、地元の農産物や加工品を給食に使用している。これは、地元の生産者にとっても経済的なメリットであり、また、生徒にとっても、地元の食材や郷土料理を知る機会になる。地元の食文化や歴史に触れることで、生徒の郷土愛や自己肯定感が高まると思われる。
ただ、そのためには、同時に地元産食材の利用を促進することも必要で、地産地消の取組みを強化しなければならない。
③ また、高校給食の実施の最も重要な効果として、高校の特色化に寄与することが確かめられた。宍粟市では、保護者から「給食があるから千種高校を選ぶ」という意見が聞かれるとのことである。地元の生徒が地元の高校に進学する要因になり得ることの証左である。
高校給食は全国的にも珍しい取り組みであり、高校の魅力やブランド力を高める要素になることは、本市での検討上も積極的要因となる。
④ 一方で、いくつかの課題も明らかになった。まず、高等学校への給食提供は、学校給食法との関係で義務教育学校の給食と同列には考えることができない。そこで、宍粟市では、中高の連携や一貫の交流事業の一つとして、高校生への給食支援を行うという体裁を採っている。即ち、市立千種中学校と県立千種高等学校は、教育課程や教員・生徒間の交流などを通して、教育の連続性や一貫性を高める「連携型中高一貫教育校」に改編さており、この教育の一環として、給食を通した食育を継続するという観点から、宍粟市の学校給食センターが千種高校に給食を提供するというローカルルールを設定している。それゆえ、栄養教諭の勤務・負担については、服務命令ではなく、ローカルルールとしての協力体制とのことである。
なお、給食調理員の服務については、学校給食センターで学校給食以外の食事を作ることは可能であるとの文科省の確認を得ているとのことであった。従って、本市でも学校給食センターが市内高校への給食提供に協力するという体制づくりは可能であり、そのために必要なら調理員を増員することもできるが、栄養教諭の勤務については改めて検討する必要があると思われる。
⑤ また、高校側の負担として、食器や食缶の購入、牛乳冷蔵庫や配膳室、プラットホームの整備等施設・設備整備のほか、受入責任者の設置、検食、食育指導、受入返却体制の確保、アレルギーの把握、給食費の徴収その他事務等の教職員の協力が必要とのことであり、本市で検討する場合も、非常に大きい課題になる。
⑥ 宍粟市における、県立千種高校への市学校給食センターからの給食提供の検討は、千種高校の保護者や学校関係者等の複数団体からの要望から始まっている。それゆえ、高校側の協力も得やすかったと思われる。
本市での検討でも、高校や生徒の実状やニーズについて、さらに詳細に調査する必要があると思われる。
(松井 道信)
朝来市と宍粟市は隣接しているが、市の規模や雰囲気に類似点の多い市である。宍粟市は林業が盛んな地で、県内では最も積極的な活動をされており、かつてはここに森林鉄道が走っていたほどである。
今回我々が視察に選んだ千種高校は、その宍粟市の中で旧町では最も小規模な旧千種町に立地する。かつては非行で風紀の乱れが著しかったらしいが、現在ではそうした事もなく落ち着いており、在校生のほとんどは旧千種町の生徒とのことであった。
全日制の高校で給食があるのは珍しいが、給食の始まった発端が保護者であったり、学校の関係者などからの熱心な要望で始まっている。というのも学校規模が小さいために校内には学食等の設備が無く、自販機(牛乳、パン)若しくは通学途中のコンビニ以外に近隣で昼食をとる手段が無かったことによる。
市内には3校の高校があるが、給食を提供しているのは千種高校1校のみであった。宍粟市が前面的に協力しており、おおむね地域住民には好評とのことである。少子化で児童・生徒数が減少していることも、新たに大きな設備投資をせずに対応でき、それが成功要因に繋がっていると思う。
ただ我々が実現したいと考えている学校給食とはスタート時点の考え方に乖離があり、問題がある事も確認できた。一方で主導的立場が異なる先進的な取り組み活動を行っている全日制学校給食について、更なる調査の必要性を感じた。
2.「議員定数・二常任委員会運営について」
兵庫県相生市
相生市議会・相生市議会事務局
会派意見まとめ
朝来市民の議員定数削減の声に応え、朝来市の議会改革に役立てるために、相生市の議会の先進的な取り組みを学んだ。
相生市では、市民からの要望に応えて、議員定数を段階的に削減してきた相生市議会であるが、議員定数の削減は、人口減少や財政状況との関わりよりも、議員討議や委員会の性質、会議の充実、効率の確保といった議会改革の観点から行われるべきであると考えている。相生市では、議員定数を14人に減らし、二常任委員会制を採用しており、これが適切な委員会運営が可能な人数であるとのことであった。
今回の視察を通じて、本市の議員定数と常任委員会運営についての我々の考え方は、概ね間違っていないものと確信をしたところである。
各会員所感
(森下 恒夫)
相生市は人口が、令和5年4月現在で27,759人と朝来市の人口と近い町である。財政規模も250億円程度と似通っている.大きく異なるのは、市の面積と立地であり、我が市の面積の23%程で瀬戸内海に面している点である。かつては造船で栄えていたが現在は造船所は撤退しかつての面影はない。新幹線の駅はあるが、駅を中心にしたコンパクトなまちと言える。
このような町の議会は平成に入ってから議員数は22人から21人、20人、18人、16人、14人(現在)と小刻みに削減されている。市民の声が大きかったようであるが直近では議員より声があがり、議長の指導力もあり14人に削減したとのことであった。
14人の内8人の会派が最大会派で、他は1~2人の小会派であることと、長老の議長の統率力もあって、スムーズに運営されているようである。極めて正常な構成と言えるのではないだろうか。当選5回以上のベテランが8名と多く、このことも安定した議会運営が出来ている要因と思われる。
14人と言う議員数であるので、当然のことながら常任委員会は2つである。委員会の開催は、会期中が4回、閉会中が4回と年間8回で3常任委員会の我が市とくらべて、特段多いとは言えない。
報酬は我が市が324,000円に対し386,000円と62,000円多いがこの点は定数が関係するので報酬審議会の議論を待つしかないところである。
今回の視察を通じて、我が市の市民の削減すべしとの声が大きいことに鑑みなんとしても削減を実現すべきと強く感じた次第である。又、相生市に出来て我が市に出来ないはずがない。強い決意を持って取り組まなければならないと決意した次第である。
(嵯峨山 博)
市民から議員定数削減についての意見が多くあったことから、これまで定数の見直しが行われ現在14名となった。当然のことながら否決された期間もあり、14名までに至るまでには時間を要しているが改革を行っている。
14名となったことにより、議会運営に支障は出ていないとのことであったが、14名が限界でありこれ以上の削減はできないとのことであった。議員の担い手問題についても問題はないようである。
また、2常任委員会にしたことにより委員会運営についても支障はないとのことであった。
人口が減少していることにより議員削減を行うという考えではなく、また、削減を市民アピールする必要もないとのことである。議員討議の充実、委員会の性質、会議の充実、効率の確保することが議会改革であると考えており、そのことにより議員定数は削減されるという考えは間違いではなかったと確認できる視察であった。
(藤原 正伸)
議員定数は、議会の構成員数・規模を定めるものであり、議会の機能やあり方に大きな影響を与える。議会の任務や機能、民意の反映のあり方に大きくかかわってくることになるのであり、その点から論じられるべきものと考える。今回の視察においても、地方自治法に定められている議会、議員の活動がきちんと出来るかどうかを考えなければいけないとの助言をいただいた。
そのような中で、市民から定数削減の声を多く聞く現状をどのように理解すべきか考えなければならない。議員定数に合理的な基準がない中で、人口は議員定数を考える上で決定的な要素となるものではないとしても、比較的重要な考慮要素の一つとなるのは確かであると思われる。
人口のほか、面積が要素として挙げられることもあるが、何らかの考慮要素となることはありうるにしても、定数に直接に関係するものではないと考える。
また、しばしば財政状況が持ち出されるが、財政全体に占める議会の経費というのはそれほど大きくはないのが一般的であり、まして議員報酬と牽連させて論じることは、本筋ではない。
政治の世界では、「身を切る改革」が有権者から支持されるのは、政治に対する不信感があるからだと言われている。我々議員は自らの役割を自覚し、市民の期待に応えるよう努める必要がある。そのような意味でも、議会活動の充実の観点から適正な定数を探る私たちの考え方は、今回の視察を終えた今も、概ね適切な方法論だと感じている。
相生市議会では二常任委員会、各7人の委員で運営されており、これが適切な委員会運営が可能な人数であって議員定数の最低限の基準でもあるとのことであった。
議会の生命線は議員間討議ができることである。この観点からその機能を恒常的、専門的に発揮させるには、組織研究によれば7~8人が適切と言われており、県内の市議会の多くも委員長・副委員長を含めて7~8人としている実状がある。
これらを踏まえるならば、常任委員会の適切な数が理論的に決まっているわけではないが、本市にあっては、二常任委員会の運営を前提に、委員会に必要な議員数を8人として、常任委員会数に一常任委員会で必要な議員数を乗じて得た数を必要な議員定数とする積み上げ方式により、議員定数を16人とすることが可能であると考える。
(松井 道信)
相生市はかつてIHIの造船の企業城下町として賑わっていたが、会社規模縮小化のために過疎化が進み、かつては42,000人を超えていた人口も現在では27,000人程度となっている。そうした中で議員定数の見直しは随分早くから取り組まれている。というのも相生市は平成の合併とは関係なく戦前から市政を敷いており、本市とは異なった歴史を歩んでいる。
議員定数の削減は早くから継続して取り組んでおられ、こうした姿勢は相生市議会の大きな特徴であると言える。相生市の人口は戦後増加傾向にあり昭和50年をピークに減少を始めている。昭和30年人口35,000人のときに議員定数30人と最大定数だったものが、人口はその後増えているにも拘らず議員定数は削減化させており、再び人口が35,000人となった平成9年には定数20人と10人も減少させている。その後も定数削減を続け平成26年には14人まで減少させている。
常任委員会は平成19年から2常任委員会であり、現在はそれぞれ7名の委員定数となっている。こうした現状に対して対応して頂いた議長からは、「うまく機能しており問題は全くない。だから報酬を増やしてほしい」と述べられていた。
この話を聞いて私は、本市の3常任委員会、議員定数18人も、16人なら十分にやっていける確信を得ることが出来た。さらに報酬に関しては、本市よりも62,000円も高いにも関わらず、「若くて新しい議員を作ろうと思えば、大幅に報酬を上げなければ学校にもやれない。月に50万。」と熱心に述べておられたことは、印象深い発言であった。