令和6年度施策提言事項の実現状況

令和6年度予算編成、事業計画に際し、朝来市創生の会から提言した重点施策の予算、事業への反映状況は以下のとおりです。


総論

概要

  • 要望の背景:
    新型コロナウイルスの影響からの回復、物価高騰、円安、労働力不足、異常気象など、市民生活や経済活動に影響を与える要因を踏まえ、持続可能な施策を求める。
  • 目標:
    市民の生命と財産を守り、福祉の向上を図るとともに、効率的・効果的な財政運営を推進すること。

重点施策と実現状況

1.人口減少対策

  • 給食費完全無償化
    → 【一部実現】物価高騰対策として2学期・3学期のみ免除
  • 高校生通学費助成
    → 【未実現】市内高校生との公平性の観点から見送り
  • 妊娠・出産・育児支援
    → 【実現】出産・子育て応援事業が開始
  • 児童館整備
    →【一部実現】 既存施設を児童館的に活用開始も不十分

2.行財政改革

  • 総合計画の見直し
    → 【未実現】進捗確認や施策の優先順位づけが課題
  • 行政組織評価
    → 【一部実現】組織改編は実施、総合政策課の機能強化が課題
  • 公共施設の再配置計画
    → 【未実現】推進の必要性が指摘される

3.福祉・保健衛生

  • 地域包括ケア拠点整備
    → 【未実現】旧簗瀬医療センター跡地利用が進まず
  • 福祉事業従事者の処遇改善
    → 【一部実現】賃金改定が実施されたが、継続的支援が必要
  • 帯状疱疹ワクチン接種補助
    → 【実現】2024年より事業開始

4.地域振興・まちづくり

  • 和田山駅前再開発
    → 【未実現】空洞化対策が進まず、再検討が必要
  • 和田山花火大会の復活
    → 【実現】2024年9月に実施
  • コンパクトシティ化の推進
    → 【未実現】研究段階で未実施

5.教育・文化

  • 全天候型運動施設整備
    → 【一部実現】多用途化を検討する方向
  • 学校の働き方改革
    → 【一部実現】部活動地域移行のあり方検討委員会を設置
  • 教員業務支援員の配置
    → 【一部実現】県からの派遣があるが十分でない

商工・労働

  • 創業支援:
    → 産業創生センターの役割強化が課題【未実現】
  • 住宅リフォーム助成の拡充:
    → 予算不足により需要を満たせていない【未実現】

6.防災・危機管理

  • 男女共同参画の視点を取り入れた防災
    → 【一部実現】女性職員の配置は実施も具体的成果なし
  • 総合的な防災対策の充実
    → 【未実現】具体策が不足
  • 防災の専門家登用
    → 【未実現】市長の関心はあるが実現していない

各論(状況評価)

給食費完全無償化
 令和6年度において、物価高騰対策の一環として2学期・3学期の給食費免除が実施されたものの、完全無償化には至らなかった。引き続き恒久的な支援を求めていく。市民の経済的負担軽減と子育て支援の観点から、国の動向を注視しつつ、通年無償化に向けた検討を継続する必要がある。

高校生通学費助成
 高校生の通学費助成は、市内高校への影響や公平性の観点から実現には至らなかった。進学支援と公共交通の利用促進の両立を図るため、補助の在り方について引き続き検討していく。今後は、実効性のある支援策を模索し、地域の教育環境の充実に向けた取り組みを提案したい。

産前・産後サポートの充実
 令和6年度より「出産・子育て応援事業」が開始され、妊婦の不安解消に向けた支援が強化された。これにより、妊娠期からのサポート体制が整備されつつあるが、依然として妊婦の孤立防止や実効性の高いプッシュ型支援の充実が求められる。地域の支援ネットワークを強化し、より手厚いサポートが行き届くよう継続的な取り組みが必要である。

産後ケア事業無償化
 市民税非課税世帯および生活保護世帯を対象とした産後ケア事業の利用料免除が実施されたものの、全利用者への無償化には至っていない。産後の母親の心身のケアと育児支援の充実を図るため、対象範囲の拡大や負担軽減策のさらなる検討が必要である。今後も継続的な支援の拡充に向けた取り組みを求めていく。

児童館の整備
 令和6年度において、市内2か所の既存施設を児童館的な施設として位置付ける運用が開始されたものの、新規整備には至らなかった。地域における子どもと保護者の交流拠点としての役割を果たすためには、十分な設備や機能の確保が課題となる。今後は、多世代が関わる地域包括型の児童館整備を目指し、より実効性の高い支援策を検討するよう求める。

総合計画/朝来市の持続のためのビジョン
 令和6年度において、総合計画の後期基本計画の策定に着手した。今後、中長期的な政策方針の再構築に取り組むことになる。持続可能な地域づくりのためには、計画の進捗管理や施策の優先順位の明確化が不可欠であり、市民の意見を反映させた実効性のある政策方針の確立が求められる。今後は、評価・予算編成と連携した政策推進体制の強化が必要である。

行政組織評価
 今年度、組織改編が行われ、総合政策課の機能強化を目的とした見直しが実施された。特に、公共交通担当の都市整備部への移管により、総合政策課がシンクタンクとしての役割を強化する体制が整えられた。しかし、政策立案力の向上や人材の確保・育成が引き続き課題となっており、今後も組織の実効性を高めるための検証と改善が求められる。

情報公開/オープンデータの取組と推進体制の整備
 オープンデータの取組は進展し、行政の透明性向上に一定の成果を上げたものの、市民や企業によるデータ活用には十分に至っていない。今後は、データ利活用の促進に向けた周知活動や、活用しやすいフォーマットでの提供を強化することで、地域課題の解決や行政サービスの向上につなげる必要がある。

雇用の適正化
 令和6年度において、会計年度任用職員の給与改定が実施され、一定の処遇改善が図られたものの、正規職員との格差は依然として課題として残る。雇用形態に関わらず適正な待遇を確保するため、同一労働同一賃金の原則に基づくさらなる改善が求められる。今後も、職場環境の整備や待遇向上に向けた継続的な取組を求めていく。

地域包括ケア拠点整備
 令和6年度において、旧簗瀬医療センター跡地の活用に関する地域協議やサウンディング調査が実施されたが、具体的な整備には至っていない。高齢者や障がい者が住み慣れた地域で安心して暮らせる体制の構築には、地域包括ケアシステムの拠点整備が不可欠である。引き続き、適切な立地の選定や関係機関との連携を強化し、実現に向けた具体的な方策を検討していく。

地域包括ケア推進
 地域包括ケアの推進に向けた議論は進められているものの、実効性のあるサービス提供体制の強化には至っていない。高齢者や要介護者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、地域包括支援センターの機能充実や人材確保が課題である。今後は、支援体制の強化とともに、多機能型の小規模拠点整備を含めた包括的なケアの実現に向けた取り組みが求められる。

福祉環境の充実/福祉事業従事者等の処遇改善等
 令和6年度において、賃金改定が実施され福祉事業従事者の処遇改善が一部進んだものの、職場定着や人材確保の観点では依然として課題が残る。持続可能な福祉サービスの提供のためには、さらなる待遇改善や勤務環境の整備が必要であり、引き続き支援策の充実を図ることを求めていく。

帯状疱疹ワクチン接種補助
 令和6年度より帯状疱疹ワクチン接種補助制度が開始され、市民の健康維持と重症化予防に向けた支援が実現した。本施策は、高齢者を中心とした罹患リスクの軽減に寄与し、医療負担の抑制にも効果が期待される。今後は、制度の周知を徹底し、接種率の向上を図るとともに、補助の継続的な拡充についても検討していく必要がある。

健幸づくりの推進/スマートウエルネスシティ首長研究会加盟について
 健幸づくり条例の制定が進められ、市民の健康増進に向けた取り組みが強化された。しかし、スマートウエルネスシティ首長研究会への加盟は実現しておらず、他自治体との情報共有や先進事例の活用が課題である。今後、健康づくりをまちづくりと連携させる視点を持ち、研究会加盟を含めたさらなる施策の充実を検討すべきである。

リノベーションまちづくりによる和田山駅前再開発
 和田山駅周辺の活性化に向けた具体的な再開発の進展は見られず、求心力の低下が引き続き課題となっている。駅前広場の活用や空き店舗の利活用など、リノベーションまちづくりの手法を取り入れた再開発の検討が必要である。官民連携を強化し、持続可能な地域活性化に向けた具体的な取り組みを推進する必要がある。

和田山花火大会の復活
 令和6年度に和田山花火大会が復活し、地域活性化と賑わい創出に大きく貢献した。新たな組織と開催地での実施となり、市民や来場者からも好評を得たが、継続的な開催には運営主体の確立や財源確保が課題として残る。今後、安定した運営体制の構築と持続可能な開催方法について検討を進めなければならない。

コンパクトシティ
 居住誘導区域内への建て替え支援や災害危険地域からの移転補助は実施されているものの、コンパクトシティ化に向けた包括的な施策の進展は限定的である。人口減少や行政コストの増加を踏まえ、持続可能な都市構造の形成は急務である。居住誘導の促進や公共施設の適正配置を含めた総合的な計画の策定が求められる。

屋根付運動施設整備
 令和6年度において、屋根付運動施設の整備計画が進められ、多用途利用の可能性を含めた検討が開始された。スポーツ振興だけでなく、防災や地域交流の場としての活用も視野に入れた計画が求められている。今後は、具体的な施設の機能や運営方法を精査し、市民ニーズに即した整備を進める必要がある。

学校の働き方改革の推進
 教員の業務負担軽減に向けた部活動の地域移行に関する検討委員会が設置され、協議が開始された。しかし、長時間労働の是正や勤務環境の改善には依然として課題が残る。具体的な業務削減策の実施や支援体制の強化を図り、教員が本来の教育活動に専念できる環境整備を進める必要がある。

学校現場の実情に応じた教員業務支援員の配置・派遣
 令和6年度において、兵庫県からの派遣により教員業務支援員の配置が進められたが、十分な人員確保には至っていない。また、不登校児童生徒の増加に伴う業務負担の増大が課題となっており、さらなる支援の充実が求められる。支援員の増員や役割の明確化を図り、教育現場の負担軽減と学習環境の向上に向けた取り組みを強化する必要がある。

多文化共生
 公共施設の窓口対応の多言語化や案内表示の改善が進められた。しかし、外国人住民の生活支援や地域との共生を深める取り組みは十分とは言えない。多文化共生を促進するためには、行政サービスのさらなる多言語対応や、外国人住民の地域参加を支援する仕組みの構築が求められる。IT技術の活用や地域との協働を強化し、より包括的な共生社会の実現を目指さなければならない。

創業支援
 今年度、創業支援に関する具体的な新規施策の展開は見られず、既存の支援体制の強化も十分ではなかった。創業希望者に対する相談窓口である「あさご元気産業創生センター」の機能や支援策の実効性について、現状の検証が必要である。創業者向けの資金支援や育成プログラムの充実を図り、地域経済の活性化に向けた取り組みを強化することが必要と考えている。

住宅リフォーム助成事業の拡充
 本事業の利用者は多いものの、予算が限られており、必要とする全ての市民が活用できる状況には至っていない。地域経済の活性化や住環境の向上を図るためには、助成対象の拡大や予算の増額が求められる。今後、より多くの市民が利用できる持続可能な制度設計を進め、効果的な支援の充実を図る必要がある。

公契約条例の制定
 令和6年度において、公契約条例の制定は実現に至らず、引き続き低価格競争による公共サービスの質の低下や労働者の待遇改善が課題となっている。適正な契約制度の確立と地域経済の健全な発展のため、公契約の透明性と公平性を担保する仕組みの導入が求められる。条例制定に向けた具体的な議論を深め、公契約の適正運用を推進していく。

男女共同参画の視点を取り入れた防災・復興体制の確立
 防災安全課に女性職員が配置されるなど一定の進展が見られたものの、具体的な防災・復興体制への反映は十分ではない。災害時の多様なニーズに対応するためには、避難所運営や防災計画におけるジェンダー視点の強化が必要である。女性や多様な立場の住民の意見を取り入れた防災施策の充実を図り、実効性のある体制整備を推進する必要がある。

総合的な防災・減災対策の充実
 防災・減災対策の重要性が認識されているものの、実効性のある施策の具体的な進展は限定的である。近年の災害リスクの高まりを踏まえ、市民目線での防災対策強化が求められる。実際の被災地の事例を参考にした計画の見直しや、防災インフラの整備、住民の防災意識向上を図る取り組みを強化する必要がある。

危機管理官等への外部専門職の登用
 市長は外部専門職の登用に関心を示されているが、具体的な採用には至らなかった。近年の自然災害の頻発を踏まえると、防災・危機管理分野における専門的知見の導入は急務である。地域防災マネージャー制度の活用や専門人材の登用をはじめ、専門的知見の導入方法を広く検討し、市の防災・減災体制の強化を図る必要がある。

以上